家づくりの知識
家づくり最前線|住宅トレンド2025まとめ
新築住宅から見る”暮らしの進化”とは?
2025年の住宅トレンドには、ここ数年の価値観の変化がしっかり反映されています。
住宅ローン金利の動き、単身・共働き世帯の増加、エネルギー価格上昇による省エネ志向の高まり、そしてAI・IoTの普及。
これらの社会背景が、新築住宅の”選ばれ方”や”求められる機能”に確かな影響を与えています。
このマガジンでは、住宅を取り巻く幅広い領域から、”2025年の主要トレンド+2026年の家づくり”について解説していきます。
1.住宅市場をとりまく経済背景

◉ 住宅ローン金利は「ゆるやかな上昇」と「慎重な借入れ」の時代へ
2024年後半から、全体として長期金利はじわりと上昇傾向。
2025年は、多くの金融機関で固定金利型が1.5%~2.0%台、変動金利が0.4%~0.7%台がひとつの目安となりつつあります。(※地域・金融機関により差あり)
結果として、金利に左右されにくい借入額の抑制と、返済計画の慎重化が顕著です。
・ 頭金を増やす
・ 35年ではなく40年返済で月々を抑える
・ 太陽光や省エネ設備で月々の光熱費を下げ、実質負担を調整する
など、”家計の総合最適化”で考える方が増えています。
◉ 物価上昇により”建築コストの透明性”が求められる時代に
木材価格・建材価格は2023~24年のピークほどではないものの、依然として高止まりの傾向が続いています。
結果として、
「なぜこの価格になるのか」
「将来のランニングコストはどうなるのか」
といった説明に対するニーズが非常に高まっていて、
・ ランニング費用の比較
・ 断熱グレードごとの光熱費シミュレーション
・ 点検・補償内容の可視化
こうした”見える化”が求められています。
2.世帯動向とライフスタイルの変化

◉ 1~2人世帯の増加が間取りに影響
国全体として、単身者・夫婦のみ世帯の割合が増加しており、「コンパクトで機能性の高い住まい」を求める声が明確に。
・ 3LDK→2LDK+多目的スペース
・ 将来を見据えた”可変間取り”
・ 収納を最小限にせず、むしろ”スマート収納”を増やす
など、必要最小限ではなく「”必要十分”を確保する間取り」が人気です。
◉ 共働き世帯の増加により”時短×家事ラク”が王道に
家事負担の軽減は、2025年も住宅の大きなテーマです。
特に、
・ 玄関からパントリー直行の動線
・ 玄関→手洗い→ファミリークローゼット→リビングの”帰宅動線”
・ 洗濯→干す→しまう がワンストップの”ランドリールーム”
など、動線の最適化による時短設計が定番化しています。
3.建物仕様トレンド

◉ 高断熱化は”全国標準化”へ
脱炭素社会への流れから、全国的に高断熱仕様の住宅が主流となっています。
特に、UA値0.46以下(HEAT20 G1レベル)を目指す人が急増。
寒冷地はUA値0.3台~0.2台を求めるケースが一般的です。
理由はシンプルで、
「光熱費が下がる」「体感温度が下がる」「資産価値が保たれる」
という3つのメリットが広く認知されてきたためです。
◉ 耐震等級3は”付加価値”から”前提条件”へ
地震への意識は依然として高く、全国的に耐震等級3取得は標準化の流れ。
2025年は耐震+制震の”複合モデル”を採用する住宅会社も増えています。
例)
・ 耐震等級3+制震ダンパー
・ モノコック構造の強化
・ 構造計算(許容応力度計算)の義務化に近い動き
安全性を”数値で証明”する動きは今後も続くでしょう。
◉ 気密性能(C値)の注目度が急上昇
2023~24年で一気に注目された気密性能。
2025年はさらに関心が高まり、C値0.5以下の施工精度が全国的に広がっています。
理由)
・ 室内温度のムラが少ない
・ 花粉・粉じん対策
・ 高性能エアコン・全館空調との相性が良い
これまで”マニアック”といわれた領域が”当たり前の評価軸”になりつつあります。
4.間取り・暮らしのトレンド

◉ 「広すぎないLDK」への回帰
コロナ禍直後は広いLDKが人気でしたが、2025年は「ちょうどいいサイズ」が見直され、LDK18~20帖前後が主流に。
理由)
・ 光熱費高騰で”冷暖房効率”を重視
・ 個室・ワークスペースの重要性アップ
・ 家族の距離感を適度に保つ意識
広さより”居心地”が優先される流れです。
◉ ファミクロは”脱・型通り”に進化
ファミリークローゼットはもはや定番ですが、2025年はより多様化。
・ 玄関横タイプ(帰宅動線特化)
・ ランドリー横タイプ(選択効率特化)
・ 寝室横タイプ(プライベート重視)
”暮らし方に合わせたファミクロ”へのニーズが増加しています。
◉ 中庭・テラスの復活
外構費が高騰し、敷地の外周を整えるより”家の中で外を楽しむ”設計に注目が集まっています。
中庭・パティオ・屋根付きテラスは
・ プライバシーが確保できる
・ 洗濯干し場としても最適
・ 子どもの遊び場として安全
といった多目的活用が人気です。
5. デザイントレンド

◉外観は”水平ライン”と”落ち着いたマットカラー”が人気
ミニマルデザインが継続的に支持され、
・ スクエアフォルム
・ 片流れの水平強調
・ 軒の深さを活かした陰影のある外観
といった特徴が人気です。
外観カラーは、
・ チャコール
・ オフブラック
・ スモークグレー
・ アイボリー×木目の2色構成
など、マット系・アースカラーが主流。
◉ 内装は”素材の調和”と”落ち着き”がキーワード
2025年の内装は、「派手さより質感」「落ち着いた色味」「自然素材風」がテーマ。
・ グレージュ
・ アッシュ系の木目
・ うすいベージュのクロス
・ 石目調のアクセント
温かみと洗練の両立が求められています。
6.省エネ・設備トレンド

◉ 太陽光パネル+蓄電池は”実質標準化”へ
電気代の高騰が続く中、太陽光は「つけるかどうか」ではなく「どうつけるか」の時代に。
・ 売電より「自家消費」
・ 蓄電池との組み合わせで”停電に強い家”
・ 全館空調との相性が良い
・ 40年稼働するロングスパンを意識した設計
という理由から導入率が大幅に上昇しています。
◉ 全館空調は「手の届く設備」へ
価格帯の広がりにより、全館空調は一般家庭でも選びやすくなりました。
メリット)
・ 温度のムラが少ない
・ 花粉・PM2.5の侵入を抑制
・ 乾燥しすぎない換気管理
・ 吹抜けと相性が良い
気密断熱の向上により、ムダなエネルギーを使わず動かせるため、以前よりランニングの不安が減っています。
◉ スマート化は”やりすぎない”自然志向に
IoT家電・スマート家電・宅配ボックス・セキュリティの普及により便利になった一方、”全部AI任せ”ではなく、
「欲しいところだけ自動化」
「手動とのバランスを大切に」
というスタンスが増えています。
7. 外装・メンテナンスの視点が重視される時代に

◉ 長寿命外壁(高耐候塗料・高耐久サイディング)の人気
メンテナンスコストを抑えるため、15~30年持つ高耐候塗料や高耐久外壁が注目されています。
例)
・ フッ素塗料
・ 無機塗料
・ 30年耐久サイディング
・ 目地レス外壁でメンテ費用低減
”建てた後のコスト”を見据えて素材を選ぶ動きが強まっています。
◉ シロアリ・防水など”見えない部分”への関心が上昇
・ べた基礎の防蟻処理
・ 換気構法と結露対策
・ バルコニーの防水仕様
など、普段見えない部分の説明を求める方が増加。
外装に関するアフターケアやメンテナンスが、住宅会社の差別化ポイントになりつつあります。
8. 資産価値の観点から選ばれる家とは?

◉ 高性能住宅=資産になる時代へ
2025年の住宅評価では、”高性能は売れる・貸せる”という価値観が明確化。
特に、
・ 太陽光・蓄電池
・ HEAT20レベルの断熱性能
・ ZEH基準の省エネ性
・ 耐震等級3
・ 長期優良住宅
などの要素が、将来の売却価格に影響するという認識が浸透しています。
◉ ランニングコストの優秀さが”家計の安心につながる”
省エネ住宅は毎月の光熱費を安定させ、”固定資産の見通しの良さ”が資産性を評価される時代。
建物そのものの価値だけでなく、
「住んでいる間の費用まで含めて資産」
と考える傾向にあります。
9. 2025年のトレンドを踏まえた2026年の家づくり

◉ ”長く住む前提”がより明確に
原材料の価格の変動や光熱費上昇が続くなか、2026年は「初期投資で性能を確保し、ランニングコストを抑える家づくり」がより一般的な考え方になっていきます。
・ 断熱性能の一層の底上げ(G2グレードが事実上の基準に近づく)
・ 高気密住宅の普及で消費エネルギーを最適化
・ 外壁・屋根の高耐久化によりメンテナンスコストを削減
・ 太陽光+蓄電池の”自家消費型”が標準化に近づく
「人生100年時代の家」として、設備寿命・構造寿命・維持費を総合的に考える方がさらに増えると予想されます。
◉ 世帯の多様化に合わせた”可変性のある間取り”へ
2025年は単身層・共働き層・二世帯志向など、暮らし方の幅が広がりました。
2026年はこれがさらに顕著になり、
「将来の変化を見越して、最初から柔軟に設計しておく家」
が主流になってきます。
例)
・ 子どもの人数が未定でも使いやすい”余白のある間取り”
・ 将来のワークスペース化に対応しやすい洋室サイズ
・ 親世帯との同居を見越した1階寝室の確保
・ 稼働間仕切りで「2LDK⇔3LDK」に切り替え可能な構成
・ 脱衣所とランドリー室の分離といった”生活動線のアップデート”
ライフステージに合わせて”育つ家”が求められる一年になりそうです。
◉ AI・IoTの本格普及で”住宅が家族のアシスタント化”へ
2025年はAI家電の普及が大きな話題となりましたが、2026年は住宅そのものが「暮らしを支えるAI基盤」になっていく年と予想されます。
例)
・ 玄関鍵・空調・換気をAIが一括管理する”見えないオート制御”
・ 光熱費と天候予測を踏まえた蓄電池の自動最適化
・ 室内の空気質を自動測定し、換気量を調整する仕組み
・ 生活パターンに合わせて学習する照明制御
など、すでに実用段階にある技術がさらに一般家庭へ浸透していきます。
AIは”便利”というよりも、「ムダを省いて家計を守る存在」としての価値が注目されるでしょう。
◉ 外壁デザインは”シンプル×耐久性”へシフト
2025年に人気だったナチュラルモダン・ダークトーン・箱型デザインは、2026年も引き続き主流になるものの、より「メンテナンス性を重視した素材選び」へと進みます。
・ 高耐候サイディングの採用率アップ
・ タイル外壁やガルバリウムの”長寿命素材”が人気継続
・ 色味はグレージュ・チャコール・ライトグレーが中心
・ 植栽や外構との一体感のある”やわらかい外観”が増加
デザインと実用性のバランスが、以前より重要視される傾向です。
◉ ”資産価値の視点”が必須に
住宅価格・金利上昇の影響で、2025年は「資産としての家」を考える人が増えました。
2026年はこれが進み、
「売る・貸す」可能性を見据えた家づくり
が重要性を増していきます。
ポイントとしては、
・ 耐震等級3
・ 省エネ性能(断熱等級5~6・BELS評価)
・ 住宅ローン控除対象となる性能照明
・ 地域相場に合った土地選び
・ 汎用性の高い間取り
・ EV・太陽光など時代と整合した設備
こうした「後から評価されるポイント」が、家の価値維持に直結します。
この記事のまとめ
- 2025年は、省エネ性や家事動線など”日々の暮らしを整える家づくり”が進化し、誰にとっても取り入れやすい新しい基準が広がった一年でした。
- 2026年は、将来の変化に寄り添う間取りや省エネ性・耐久性への投資がより重視され、快適性と安心を長く保つ住まいづくりが求められていきます。
- 今後も新しい設備や施工技術は登場していきますが、その中心にあるのはいつの時代も同じ、「家族が安心して心地よく暮らせる家」だということを忘れずに、最適な住まいを選んでいきましょう。




















